このおもちゃは,一見すると角運動量を保存しないように見える不思議な現象を楽しむものである。
実際には底面の摩擦によって床と運動量のやりとりをしており,摩擦が本質的に運動に関与している。
角運動量を保存しないように見える不思議な現象として,この他にファラデーの単極誘導とかNマシンとか
呼ばれている物がある。
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結論から言うと,単極誘導は角運動量が空間の電磁場に変換される現象であり,
奇妙に見えるからといってフリーエネルギーが発生するなんてことはない。
読者は,光や電磁波が光子として運動量を持つことをご存知だろう。質量が無くても運動量は存在できる。
面白いのは静電磁界の存在する空間は角運動量を持っているということである。
そして角運動量を持つ主体が電極や磁石といった電磁界を発生させている物体ではなく,空間そのものであり,
「角運動量」という力学的な物理量が,人間の感覚では知覚不能だが物理的には全く同じ物理量である
「静電磁界」に変換されるため,非常に奇妙な現象に見える。
単極誘導の詳しい原理については[青野 修 著,小出 昭一郎・大槻 義彦 編:
物理学One Point-2 電場・磁場,共立出版]のp.62やp.81を参照してほしい。
筆者が修士課程の学生だったころ,エレクトロニクスライフの記事に
これが掲載されていたのだが,なぜ角運動量を保存しないように見えるのか,その原因が
分かったのは恥ずかしながら博士課程を修了してからだった。
でも,何人もの物理学科卒や電子工学部卒の学生に尋ねたが誰もこの現象を説明できなかったのだから,
筆者が恥じることはないのかな?それにしても角運動量は奥が深い。
筆者は98年3月末にコネチカット州Hartford空港から, University of Massachusetts(マサチューセッツ州,Amherst) のDr.Suttonの研究室へ見学に行く途中,Ingresideというフリーウエー出口の, すぐ横にある巨大なショッピングモールで科学グッズの専門店という妙な店 を見つけて購入した。 バケツ程度の大きさのカゴいっぱいにコレが無造作に置かれていた。 しかも商品の名前や遊び方の説明等は一切なく, 紙切れに値段が書いてあっただけと記憶している。 1個2ドル程度だった。 小林研究室の学生のおみやげ用にと30個くらい買ったら, 店のねーちゃんに「学校の先生ですか?このたくさんのレンズは子供たちへのおみやげ?」 みたいなことを言われたので, 店もこれが何なのか分かずに売ってるようだった。 ちなみにそのとき「そうです」とか答えて苦笑してしまった。
様々なコマについて取材しているという方から
「ラトルバックはコマの一種なんでしょうか?」という質問をいただいた。
なかなか鋭い質問だ。
コマは静止している状態では不安定ですぐにバッタリと倒れてしまうが,
回転すると安定して立つことが本質だと思う。
ラトルバックは静止していても曲面を下にして水平に安定させるのは簡単であり,
コマのように回転することで安定になるというわけではない。
一見するとコマのようにぐるぐる回るおもちゃではあるが,
ラトルバックはコマではないというのが筆者の結論である。
それにしても,コマの取材で何をどう検索するとこのページにたどり着くのだろうか?
「ラトルバックはどこで入手できるのでしょうか?」という質問をいただいた。 筆者は,とある筋から,ラトルバックの製造元がすでに生産をやめているため 入手困難ときいているが真偽は定かではない。 少なくとも神奈川県内や東京都内の科学グッズを扱っている小売店などでは 見掛けたことはない。 WEBで調べてみたところ,日本国内では理科教材を扱っている 中村理科工業(http://www.rika.com/) がラトルバックも扱っているようである. この会社のホームページよりweb製品カタログから「ラトルバック」で 検索すると,面白科学グッズ・おもちゃとして登録されていた。 価格は750円となっており,米国まで買いに行くことを考えればリーズナブルだろう。
ラトルバックの綴りを間違えていた。Lattlebackではなくて正しくはRattlebackである。 (2000.05.24)
(2007.07.23) 村上様より、ラトルバックについてのシンポシウム発表案内のご連絡と、 関連論文をお送りいただきました。